
この記事はポッドキャスト Episode 52:トレインスポッティングとパルプ・フィクション(16:41)の内容を書き起こし、読みものとしてまとめ直したものです。
人生で映画は1000本ぐらい見てきました。
1000本というと一般的にはかなり多いんですけど、専門的な人からしたら全然見ていないレベルだったりします。なので僕は「中途半端な映画好き」としてポジショニングしています。
ここ半年、1年ぐらいは全然見てこなかったんですけど、最近になって、自分がいま見たい映画のポジションがちょっと見えてきたんですね。
最近の映画に興味が持てない、見ても面白くない、という話を前回もしました。
正確に言うと、面白いんだけど、求めているものとは違う、という感覚です。
カメラもCGもとても進化して、映像は本当に綺麗だし、見応えもあります。だけど何か薄いというのが、どうしても拭えないんですね。こういう感覚の人、結構いらっしゃるんじゃないかなと思うんですけど。
僕は1980年生まれで、1990年代のオルタナティブな時代とともに青春を送ってきたタイプの人間です。10歳から15歳がちょうどあの時代で、ミニシアター系だけじゃなくて、ハリウッドからもオルタナティブなものが生まれてきた時期だったと思うんですね。
僕がいまだに一番好きな映画は、16歳の時に見たダニー・ボイルのトレインスポッティングです。
思い出込みの評価なのかもしれないんですけど、そういうのを抜きにフラットに見ているつもりでも、やっぱりあれが一番なんですね。
友達が「これを手に入れたから一緒に見ようぜ」と言って、友達の家の14インチぐらいのテレビデオで、ビデオテープで見ました。あまりに衝撃的で、見終わってすぐ「もう一回見たい」と言って、2回連続で見たんですね。他の友達を待たせていたと思うんですけど、そんなの構いなしに釘付けになっていました(笑)
トレインスポッティングは非常にダメな映画ではあるんですけど、使っている音楽はかっこいいし、登場人物はスタイリッシュで、あんな映画は当時なかったはずです。当時の映画のシーンを大きく変えた一本として、いまでも多くの人の心に残っていると思います。
同じ16歳の夏休みには、パルプ・フィクションも見ました。夜中の3時ぐらいまで起きて、テレビでやるのを見たんですね。
当時BURSTという雑誌に載っていて知ったんですけど、僕にとってブルース・ウィリスはダイハードのイメージだったので、「ブルース・ウィリスが出てんだ」ぐらいの感じで見始めた記憶があります。あれもハリウッドを変えた映画で、オルタナティブなものを第一線でやっている、そういうところが好きだったんだと思います。
ダニー・ボイルは、時代の捉え方が本当に上手な監督だと思っています。
最近だと「28年後…」も、あのシリーズの時代感を現代に置き換えたらどうなるかを、見事に表現していました。
そしてT2、トレインスポッティングの続編ですね。あれは1に対するきちんとしたアンサーになっていて、レントンたちがしっかり20年後を生きている。そこにかなりのリアリティがあるんですね。
不思議な感覚なんですけど、作品としてはT2のほうがよくできていると感じています。それでも一番好きなのはトレインスポッティングなんですね。初期衝動ってやつなんでしょうね。
僕は麻薬とかには1ミリも興味はないんですけど、レントンやシックボーイに、どこか自分を重ねてしまうんです。ダメで、臆病で、だけど強がりで、一人で冒険してしまう。友情を裏切ったりもするけど、心の底ではどこかつながっている。そういうところです。
映画というのは、ああやって語れるものだと僕は思っていて、語れる映画が本当に好きなんですね。
そして、そういう映画がどんどん減っていっているんじゃないかと感じています。ただ、これは僕のおごりなのかもしれません。
だから、いま15歳とか20歳とか25歳で、当時の僕みたいな思いで映画を見ている人に、ぜひ話を聞いてみたいんです。「そんなことないよ」と言ってくれるのか。
半年ぐらい前に、映画好きだという25歳ぐらいの子に話を聞いたら、なんてことない普通の映画好きでがっかりした記憶はあるんですけど(笑)。それでも、映画に熱中している青年の話を、いろいろ聞いてみたいなと思っています。
🎧 この話は音声でも聴けます: Episode 52:トレインスポッティングとパルプ・フィクション(16:41)